米国音響学会に出席しました


2010年米国音響学会がメキシコのカンクンにおいて11月15日〜11月19日の間開催された.今年は,2nd Pan American/Iberian Meeting on Acousticsという国際会議としての開催でもあった.世界中から幅広い音響学に関する講演が行われ,異種分野の融合を強く印象づける講演が目立った.たとえば,ハーバード大メディカルスクールのCariani先生による,「安藤四一の建築音響学理論」という招待講演は興味深いものであった.奇跡のコンサートホールと称される霧島国際音楽ホールの音響設計を安藤四一先生が行われたことに関する内容で,音響心理学的パラメタの導入と経緯などについて紹介された.実際にクラッシック音楽やアナウンスの音響音質を聴衆に聞かせながらの講演であった.日本人の研究者の研究内容を,ハーバード大の医学部の先生が絶賛する姿を見るのはなんとも心地よいものである.

木曜日には,「Thirty Years of Resonant Ultrasound」という共振超音波スペクトロスコピーに関する特別セッションが開かれ,この分野の第一人者が集結することとなった.共振超音波スペクトロスコピー(Resonant Ultrasound Spectroscopy: RUS)とは,微小な1つの個体からすべての弾性定数を決定することのできる画期的な手法であり,平尾研もこの分野では非常に重要な貢献を行ってきた.今回の発起人は,Mr.RUSと呼ばれるロスアラモス国立研究所のMigliori博士であり,平尾研からは荻が招待講演を依頼された.

さて,カンクンについて.ユカタン半島の東北に位置するこの町は,


ダウンタウンとホテルリゾート地区に大別されている.わずか40年ほど前にリゾート地として開発がすすめられたらしい.当時はわずかに3家族のみが居住していた町だが,現在では世界の中でもリゾート地として名高く,毎年,多くの観光客が訪れている.日本からも新婚旅行と思わるカップルを多く見かけた.

カンクンの魅力は何と言っても美しすぎる青すぎるカリブ海.学会会場のゴージャスなホテルのロビーからは,下の写真にみられるような絵葉書のようなビーチが横たわっている.こんな場所で学会を行うと講演会会場へたどり着けずにビーチへと流されて行った人も少なくはないはずだ.もちろん荻はそんな誘惑に惑わされることなく毎日講演会場へ直行したことは言うまでもない.

学会会場のホテルのロビーからの景色.カリブ海の青さがまぶしい.

青い海だけでなく,マヤ文明に触れることができることもカンクンの魅力.カンクンから車で3時間程度の範囲で重要なマヤ遺跡がいくつかある.中でもチェチェン・イッツァは世界遺産にも登録され,かなり神秘的な場所らしい.

チェチェン・イッツアに存在するピラミッドエル・カスティージョ.中央の階段はピラミッドの4面すべてにあり,全ての段数の総和は365.これはマヤ暦の1年に等しい.階段は三角形の石を重ね合わせて作られているらしく,見事な音響反射板となっている.

音響学的に興味深い設計が多数存在するらしく,大きなメガホンを使用せずとも広大な敷地の隅々まで声が行き渡るように建造物の形状と構成部品が設計されているらしい.このあたりは土地が痩せているために作物の成長には豊富な雨が欠かせない.雨神様を信仰し,イケニエを様々な形て提供してきたことも.

カンクンはリゾート地として栄えており,観光のおかげで潤っているようだが,その近郊の町はそうとも限らない.郊外へ出ると,誰の土地ともわからない場所のあちこちにどうやら勝手に建設したと思われる手作りの住居が整列している.



車もバイクも侵入できないような土地である.なんでも,他人の土地だとしても,5年間居住してしまうと追い出すことができないらしい.居住の権利を有するということ.いわば,実効支配ですね.そんなこんなで,メキシコにはそういった住民が相当多くいたらしい.最近,日本でいうところの国勢調査が行われ,オフロードバイクや自転車で隅々まで居住者を調べたところ,なんと,1200万人も人口が増加して,1億を突破したらしい.もっともっと調べればさらに人口が増加するのでは...

マヤ人について.マヤ人は笑わない.よく知る人がいわく,農耕民族だからとか.狩猟民族は狩りの最中にばったり他の部族と出くわしたときに,攻撃される前に「笑顔」をもって敵意の無いことを示してきた.農耕民族にはそういった訓練を受けることなく笑いが少ないとか.また,民芸品を販売していても,押し売りのようなまねはほとんどしない.声をかけてくることもかなり稀である.彼らは自給自足しており,家に帰ればいつでもご飯が食べられるためにガツガツしていないのだ.

コーンの話.マヤ人をよく知る人からこんな話を聞きました.人類最高の発明の一つはとうもろこしである,と.昔昔はトウモロコシは種が数個しかなかったとか.人々は茎部をチューチュー吸って甘い汁を楽しんでいたらしい.種は食べるためのものではなく栽培のためだけに使用されていた.なぜなら,種には毒素が含まれており,そのまま食べるとお腹をこわすからだ.栽培のため,一粒でも多く種がとれる品種を人々は選りすぐって栽培し,種の数が,数個から10個,15個と徐々に増えていったとか.この間,何百年もかかっていることは言うまでもない.あるとき,マヤ人が,種を集めてボイルして,石ウスでペースト状にして,厚い石のプレートで焼いて食べたらしい.いわゆるトルティアの誕生である.ボイルすると毒素が除去できることをちゃんとマヤ人はしっていたらしい.世界で一番最初にトウモロコシをボイルして食したのがマヤ人だったのだそうだ.

さて,帰国日.午前6:00の飛行機のため,午前3:30にシャトルバスに乗り込み,午前4:00に空港に到着.こんなに早くついてもチェックインがまだ始まっていないのではないだろうか,と思ってみたが,なんと,チェックインカウンターにはすでにめちゃめちゃ人が並んでいるではないか!何時にホテル出たのだ,この人たちは...チェックインの作業がゆっくりでのんびりでがつがつしていないので時間がかかる.ゲートイン後,いよいよカンクンとお別れ.最後にマヤ族の民族衣装を着た人形のオーナメントで埋め尽くされたステキなクリスマスツリーが見送ってくれた.

カンクン国際空港内の巨大クリスマスツリー

by Princeton