第一原理シミュレーションによるナノ材料の弾性定数計算

ナノテクノロジーの急速な進歩に伴い,ナノ構造物の機械特性を理解することが喫緊の課題となっています. 平尾研では第一原理計算というコンピュータシミュレーションを用いて,ナノ構造物の弾性定数を計算し,平尾研独自で開発した計測法による実験結果と比較することにより,構造や機能との関係を調べています.

物質の弾性定数は,エネルギーをひずみで二階微分することによって得られます.ここでは,z軸方向の弾性定数C33を例に挙げて説明します.下図のように,ひずみを与えた系のエネルギーを第一原理計算によって求め,これをひずみの値を変えながら繰り返します.系のエネルギーは,

 

のように書くことができますから,両者の関係に二次関数をフィットすることによって,弾性定数を決定することができます(上式で,V0,S,E0はそれぞれ平衡体積,ひずみ,平衡状態のエネルギーを表します).

ただし,実際の計算で与えるひずみは上図のグラフのように大きくても1%程度です.アニメーションはかなり大げさに変形させています.


左図は2原子層のCoと3原子層のPtとを交互に積層したCo/Pt超格子薄膜をコンピュータ上で仮想的にモデル化した図です.このようなCo/Ptモデルの弾性定数を第一原理シミュレーションによって計算することができます.さらに,レーザー超音波RUSを用いて超格子薄膜の弾性定数を正確に測定し,計算結果と実験結果を比較することによって,Co/Pt超格子が示す異常弾性の起源や垂直磁気異方性との関係を探ります.

このように,私たちはナノ構造物の弾性特性と機能に対し,理論計算と超音波計測の両面からアプローチすることによって,ナノ構造物が示す特異物性とその起源について調べています.


<参考文献>

  • H. Tanei, K. Kusakabe, H. Ogi, N. Nakamura, and M. Hirao, "Observation of gamma-point phonon frequency in ultrathin metallic films confirmed by ab initio calculation and lattice dynamics", Appl. Phys. Lett. 95, 011902 (2009).
  • H. Tanei, K. Tanigaki, K. Kusakabe, H. Ogi, N. Nakamura, and M. Hirao, "Stacking-Fault Structure Explains Unusual Elasticity of Nanocrystalline Diamonds", Appl. Phys. Lett. 94, 041914 (2009).

(最終更新日:2009/08/31)